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2011年 06月 05日
35兆円を越した医療費だが、医療パフォーマンスは世界一。
(第三者考察) 医療の目的は患者を死から救うことと患者のQOL(生活の質)を向上させることである。前者に対して後者の重要性がますます高まっているとはいえ、前者の重要性が減じるわけではない。年齢別の死亡率から計算される平均寿命(ゼロ歳時の平均余命)は前者のパフォーマンスをあらわす代表的な指標である。 図に掲げたのはOECDの資料(Health at a Glance 2009)に基づき1人当たりの医療費と平均寿命の相関図をOECD諸国について作成したものである。 対数近似曲線を加えたこの相関図は、医療制度の効率性を分析したOECDの論文においても作成されている。同論文による平均寿命という指標の性格についての評価は末尾の(注)に示した(OECD 2010)。 平均寿命と1人当たり医療費は正の相関をもっていることが明らかである。近似線は1次直線より対数曲線の方がR2値が高く、当てはまり度がよいと判断される。医療費をかけるほど平均寿命は長くなっているのであるが、医療費が大きくなるほど寿命の伸びは小さいのである。なお、米国は近似線から大きく乖離しているので図中に示した通り、米国を除けばR2値は大きく上昇する。 2つの点に留意が必要である。1つは平均寿命は医療費だけで決まるわけではない。近似曲線から乖離している国が多いことでもそれがうかがえる。2つ目は、1人当たり医療費と平行して変化する変数が平均寿命に影響を与えている可能性がある。1人当たり医療費はその国の所得水準(1人当たりGDP)と比例して増える。従って、平均寿命に影響を与えそうな医療費以外の要因、例えば、栄養状態、衛生環境、防災環境、病院までの道路の整備状況などは所得水準の向上により改善されていくものなので、1人当たり医療費が所得水準の単なる代理変数に過ぎない側面が残るのである。 さて、相関図に戻ると、医療費をかけている割に寿命が長いか短いかで各国の医療のパフォーマンスの良し悪しを判断することが可能である。 米国は医療費の割に平均寿命が低く、医療のパフォーマンスは悪いと言わざるを得ない(米国の医療事情については図録1900参照)。他方、日本は医療費の割に平均寿命が長く、医療のパフォーマンスは世界一である。 米国程ではないが、米国と同様にパフォーマンスが悪いのは、デンマーク、ハンガリーといった国であり、日本ほどではないがパフォーマンスが良いのはイタリア、スペイン、オーストラリアといった国である。 OECDの経済構造改革報告書も同じデータで同じく対数近似曲線を付した図を掲げ、こう言っている。「一人当たりの医療費支出は健康状態の違いを説明する最も重要な要因である。しかしながら、最も支出の多い国が必ずしも健康条件の最もすぐれた成果を生んでいる国ではない。これは、支出の対費用効果を改善する余地があることを示している。例えば図に見られるように、デンマークはスウェーデンやアイスランドより保健支出は若干多いが、種々の健康指標は他の2つの北欧諸国より低くなっており、平均寿命にもこれがあらわれている。」(OECD2011) 図で取り上げた30カ国は、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、イタリア、日本、韓国、ルクセンブルク、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スロバキア、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、英国、米国 ご声援を ↓ にほんブログ村
by aki_1947
| 2011-06-05 06:59
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